「急な訃報を受け、仕事先から直接お通夜に駆けつけたい。でも、喪服を持っていない」。夏の暑い日であれば、なおさらその悩みは深刻です。お通夜、特に「仮通夜」と呼ばれる、亡くなった当日の夜に行われる近親者だけの集まりや、急な連絡で駆けつける場合には、必ずしも正式な喪服でなくても許容されるという考え方があります。これは「訃報を聞いて、取り急ぎ駆けつけました」という気持ちを表すため、むしろ喪服を用意していると、不幸を予期していたようでかえって失礼にあたる、という日本的な配慮に基づいています。この場合、男性であれば、ダークカラー(黒、濃紺、チャコールグレーなど)のビジネススーツに、白無地のワイシャツ、そして黒無地のネクタイと黒い靴下に履き替えれば、最低限のマナーはクリアできます。ネクタイと靴下は、コンビニなどでも購入できるため、弔問用のセットとして鞄に常備しておくと安心です。女性の場合も同様に、黒や紺、グレーといった地味な色合いのワンピースや、ブラウスとスカートの組み合わせであれば許容範囲とされます。ただし、肌の露出が多い服装や、派手なアクセサリー、カジュアルすぎる服装は避けるべきです。もし可能であれば、黒いストッキングに履き替え、予備の黒いシンプルな靴を職場に置いておくと、より丁寧な印象になります。しかし、これはあくまで「急な弔問」の場合の例外的な対応です。翌日の告別式に参列する場合は、必ず正式な喪服を着用するのがマナーです。また、最近ではお通夜から一般の弔問客を受け入れる「半通夜」が主流となっているため、お通夜であっても、事前に連絡を受けて参列する場合には、できる限り喪服を着用していくのが望ましいでしょう。状況を判断し、故人とご遺族への敬意を第一に考えた服装を選ぶことが大切です。