夏の葬儀において、マナーを守りながら少しでも涼しく快適に過ごすためには、服装そのものだけでなく、小物選びや見えない部分での工夫が非常に重要になります。小さな配慮の積み重ねが、体感温度を大きく左右し、心穏やかに故人を見送るための余裕を生み出します。まず、男性、女性問わず必須となるのが「インナー(肌着)」の選び方です。素肌の上に直接ワイシャツやブラウスを着ると、汗で張り付いて不快なだけでなく、見た目にも清潔感がありません。吸湿性、速乾性に優れた機能性インナーを着用することで、汗を素早く吸収・発散させ、サラサラとした着心地を保つことができます。色は、白やベージュ、グレーなど、上に着る服に響かないものを選びましょう。次に、携帯する小物です。夏の葬儀では「扇子」が非常に役立ちます。仰々しいものではなく、黒や紺の無地で、骨組みも黒檀や竹といったシンプルなデザインのものを選べば、儀式の最中にそっと仰いでも失礼にはあたりません。うちわはカジュアルな印象が強いため、葬儀の場には不向きです。また、「ハンカチ」も必須アイテムです。流れ落ちる汗を拭うために、吸水性の良い綿素材のものを準備しましょう。色は黒か白の無地が基本です。替えのハンカチをもう一枚持っておくと、さらに安心です。女性の場合、メイク崩れを防ぐために、あぶらとり紙や、メイクを軽く押さえるためのフェイスパウダーを化粧ポーチに忍ばせておくと良いでしょう。そして、意外と見落としがちなのが、斎場への行き帰りの対策です。日傘を差す場合は、黒や紺の無地のシンプルなものを選びます。また、首元を冷やすネッククーラーなども、斎場の外でなら有効な熱中症対策となります。建物に入る前に外せば問題ありません。こうした小さな工夫を凝らすことで、厳しい夏の暑さの中でも、故人への敬意を失うことなく、心静かに最後の時を過ごすことができるのです。
夏の葬儀で涼しく過ごすための小物と工夫