火葬場から戻り、初七日法要を終えた後に行われる「精進落とし(精進上げ)」の席は、一連の葬儀儀礼の締めくくりであり、遺族が僧侶や世話役、親族を労うための宴席ですが、ここでの振る舞いにも「見送り」の余韻を壊さないためのマナーが求められます。本来は四十九日の忌明けに精進料理から通常の食事に戻すことを意味していましたが、現在では葬儀当日に繰り上げて行うのが一般的となり、故人を偲びながら食事をし、お酒を酌み交わすことで、緊張していた心身を解きほぐす場として機能しています。席順は、上座に僧侶や世話役、会社関係者などの来賓が座り、遺族や親族は末席(下座)に座って接待役を務めるのが基本ですが、参列者として招かれた場合は、遺族の勧めに従って指定された席に座り、遠慮しすぎないことが大切です。食事中は、故人の思い出話を静かに語り合うのが最もふさわしい話題であり、大声で笑ったり、政治や宗教、病気の話など意見が分かれる話題や暗くなる話題を出したりするのは避けるべきですし、お酒が入ると気が緩みがちですが、泥酔したり長居したりするのは遺族にとって大きな迷惑となるため、節度を持って早めに切り上げるのが賢明です。献杯の発声があった後は、「いただきます」と言って食事を始めますが、乾杯のように杯を合わせたり、拍手をしたりするのはマナー違反ですので注意が必要です。遺族はこの席で、参列者一人ひとりにお酌をして回り、感謝の言葉を述べることが多いですが、参列者側としても「お疲れ様でした」「無事に終わってよかったですね」と遺族を労い、励ます言葉をかけることで、遺族が安心して休息できる雰囲気を作ることが最後の務めとなります。精進落としがお開きとなり、会場を後にする際の「お世話になりました」「失礼いたします」という挨拶をもって、本当の意味での「葬儀からの見送り(帰還)」が完了し、それぞれの日常へと戻っていくのです。